My-yuki Project
1999年 7月 5日作成
「なぜ私はここにいるのだろう」
| 5 私には一つだけ希望が残っていた。それはチョコレートだ。 妹が、食べたいと言っていた。チョコレートを買って帰れば、少しは彼女の気もおさまるだろう。 小遣いの半分はテレカに変わった。あと三週間、やはり彼に電話をしなければならない。余分な金は無かった。買って帰れば、彼女のわがままを増長させるだろうこともわかっていた。妹が喜ぶかどうかわからない。頼まれたわけでもない。なぜ私が妹に尽くさなくてはいけないのかもわからない。しかし、それでもなお、買わなければいけないと思った。 感情が、伝染したのだと思った。 やたらとチョコレートが食べたかった。妹が喜ぶかどうかなんて、関係ないのだ。私が食べたいから買うのだ。もう、他の事などどうでもいい。買わなければ。 妹が欲しがっていたブランデー入りのチョコレートは、この辺りではほとんど売っていなかった。どうしても、それでなくては家に帰れないと思った。自転車で五、六軒まわった。 やっと、小さな店でそれを見つけた。これで家に帰れる…!私はとにかく嬉しかった。 自転車は、私にとって必要なものだった。頭も体も何とか立ち直らせてくれる。風を切って走ること。空気は、ちゃんとそこにいる。 自転車をこぎながら、なぜ私はここにいるんだろうと思った。 チョコレートを持って帰れば、妹は喜ぶかもしれない。喜ばないかもしれない。 彼は明日、どんな顔で私に会うのだろう。私を嫌っただろうか、それとも大丈夫だろうか? 私は安住の地に帰れるのだろうか。そうだとすれば、それは一体いつのことなのだろう。 なぜ私はここにいるのだろう。 妹は喜ぶかもしれないし、喜ばないかもしれない。 私は力一杯、走り続けた。 (了) |
"My-yuki Project" Produced by Yukie Kanda.