My-yuki Project

[タイトルページ][読み物][なぜ私はここにいるのだろう]
1999年 7月 5日作成

「なぜ私はここにいるのだろう」
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 なぜ私はここにいるのだろう。
「この大学は、この科目じゃ受けられないんですよ」
 汗が脇の下から腰まで流れていくのを感じた。きっと顔は真っ赤なんだろう。ハンカチはもう、気持ちの悪い湿気を帯びて変色している。
「ここに行きたいって決めてたの?」
 別の教師が優しく尋ねる。あ、いえ、ちょっと思っただけなんですけど、となるべく明るく答える。目頭が熱くなった。しかし、ここで負けるわけにはいかない。汗がスカートの中を通り過ぎる。こんなに汗って大量に流れるものなのだろうか?――それにしても話が長い。
「やっぱり駄目みたいねェ…」
 なぜこんなに話が長いのだろう。受けられないと言うことは動かせない事実なのだし、なによりも最初の数秒で私はそれを理解したというのに。そんなこちらの気持ちに気付かないのか(私がそれを気付かせまいとしたのも事実だが)、優しい先生は、またほかの教師をつかまえて検討する。
「これは駄目ですよ。大学側が出した条件なんだから、こちらがどうこう言うことじゃない」
 駄目、駄目、駄目。何度この言葉を聞いたことか。駄目なのはわかった。どうしようもないこともわかった。だのに、なぜこの人達は「どうしようもないこと」を確認し合って無駄に時間を使っているのだろう?時間とは、そんなに無駄に使うべきものではないのだと思う。きっと。
「ああ、これは僕が生徒に伝えなかったんですよ。当然わかっているものだと思ったから」
4人目の教師が全く悪びれずにそう言った。こいつのせいで、と普通は思うんだろうな、と私は考えた。
「僕が伝えなかったんですよ」
 なぜか、彼は「僕が伝えなかった」という言葉を何度も繰り返した。まるでわざわざ憎まれようとしている、漫画か何かの悪役のようだ、とも思った。
 彼がきちんと伝えてくれていたら、こんな事にはならなかったのだと思う。彼は生徒に伝えるべきだったのだ。――彼でなくても構わない。誰か一言、私に言ってくれたなら――。でも、別にそんな事は問題ではない。志望校が最初から決まっていれば、どの科目を受ける必要があるのか、ちゃんと調べる事ができたのだから。――が、それもまた、今の私にとっては問題ではない。なぜならば、その原因を作ったのは過去の事で、そして過去は取り戻せないのだから。進まない会話にいらいらしながら、そんな事を考えていた。
 ここにいる人達はわかっているのだろうか?――過去の失敗を語るときには、未来へと向かう反省が必要だ。ただ「駄目だ」を繰り返すのに、一体何の意味があろう?  時間はただではない。でも本当の価値は誰も知らない。

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